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2012年4月20日 (金)

「무산일기(ムサン日記〜白い犬)」を観ました

久しぶりに試写会が当たりwink、「ムサン日記〜白い犬」を観てきました。

ストーリー→「ムサン日記〜白い犬」公式サイト

以下、ネタバレあります。

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映画全体の10分の9くらいまで、脱北者の主人公・スンチョルの悲惨な現実が延々と続き、観ているのが精神的につらかったです。
彼は、ただ真面目に誠実に生きようとしているだけなのに、目の前の現実は容赦なく彼を痛めつけます。
脱北者であるということ、それだけで彼の明るい未来は閉ざされています。
でも、これはこの映画の監督が言っているように、脱北者だけがおかれている現実ではなく、たとえば日本でもどこでも、こういった社会の底辺に(本人の問題ではなく)追いやられている人たちは大勢いるからです。

映画の最後で、彼は唯一の現実の友だちギョンチョルを裏切ります。
同居人のギョンチョル(同じ脱北者)は詐欺まがいの仕事をして生計を立てていたのですが、それが失敗して命を狙われる状況になってしまいます。
そのため、アメリカに高飛びするために、部屋に隠し持っていた金をスンチョルに持ってきてもらう約束をします。
スンチョルは唯一の友だちとしてそれを承諾するのですが、あろうことかそのお金を持ち逃げしてしまいます。
このシーンは、ぜひ映画で見てほしい場面です。
持ち逃げしたお金で、かっこいい温かな洋服を買い、切ることをかたくなに拒んでいたおかっぱ頭の髪を切り、一度クビになったカラオケ店員の仕事を再度始めます。

スンチョルは教会に通っていて、読む本と言えば聖書、聴く音楽と言えば賛美歌…というくらい、敬虔なキリスト教信者です。
でも現実の中には神はいません。
皮肉なことに、最後の最後で友を裏切り、彼が彼でなくなったとき、はじめて神は彼に微笑んだように感じました。
というのは、彼が誠実に生きようとしていたときには、彼の目の前には悲惨な現実しかなく、彼が友を裏切り、これまでの自分を捨てたとたん、現実の生活はうまく回り始めたからです。

でも、結局、彼は本当に幸せな現実を手に入れることができるのでしょうか。
映画の副題になっている「白い犬」。
悲惨な生活の中で唯一本当に心を許していた白い犬が、彼が過去の自分を捨てたとき、死を迎えます。しかもあっという間に、あまりにも無惨な死を迎えるのです。

昔、戦中・戦後に、闇市で米を買う事を拒否して餓死した人がいたという話がありますよね。
スンチョルは餓死を選びませんでした。
誠実に生きようとすることをかたくなに貫こうとしていたスンチョルも、生きるためには、その誠実さを捨てるしか方法がなかったからです。
暗くて重い映画でした。
監督が「暗い映画を作ってしまって、すみません」と言うくらいですから…。

*最後に一つ。
この映画はスンチョルが脱北して韓国に来てからの生活を描いた映画です。
でも、タイトルは「ムサン日記」。
ムサンは中国との国境に接する北朝鮮の街で、脱北者の多くがこの街を目指し国境を越えると言われ、映画『クロッシング』の舞台にもなっているそうです。
つまり、映画自体はムサンでの生活ではないんです。
でも、そこに、スンチョルの人生、脱北者の人生が象徴されているのかもしれません。

おすすめ度は…星4つ(満点は星5つ)です!
スンチョルの感情の変化が、映画から溢れ出てきますweep
スンチョルが隣にいるように感じました。

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